「かえって寝た方がええんちゃう?」
「やだ」
「いや、やだやないやろ、寝たほうがええんとちゃう?」
「やだ」
「だからやだやないやろ・・」

頭がぐらつく。なんだコレ。超気持悪いぞ。やばい、きっと神様が私の美貌を恨んだに違いない。
そうだ、絶対そうだ。くそう、いつか殴ってやる。キモチワルイ、フラフラする、吐き気がする、
頭が痛い。なんだコノヤロウ。ふざけんじゃねえぞ。今日は折角の好きな授業のオンパレードだと
いうのに。

「自分ホンマ辛そうやで・・・?」
「アンタがいると余計つれーよ」
「いや、もうホンマに帰ったほうがええって。見るのも辛いんやから」
「じゃあみんな」
「しゃあないやろ?俺の前の席なんやから」

私はアンタがいるだけで更に気分が悪くなりそうだよ。ああ、どうしよう。今日は部活もあるし、
授業は殆どが実技だし、英語も社会も何も無いという素晴らしい日だ。そんな日に休んでたまるか、
たとえ何があろうとも、今日は絶対行く、と思ったのだ。それに、今日は、

「・・・・・・・・・・・・絶対、帰らない、もん」









絶対帰らない、と忍足に宣言した時のあのため息の吐き方。超ムカツク。それでも、最後の最後に
は、なんかあったら俺にいえ的な事を言ってくれた忍足には感謝をしなければいけないと思った。
感謝なんかしたくないけど、したくなんかないけどねっ!それにしても、意気込んだはいいものの、
状態は悪化するばかりだった。更に気分は悪くなり、吐き気がひどい。今でも吐けそうだ。いや、
でもまだあと三時間残っている。何故こんな日に限って一番好きな教科が一番最後にあるのか。ま
ったく。そして放課後になったらダッシュで部活に行くか、帰るか、その二択だ。どちらにしろこ
んな状況なのにダッシュという道は免れない。いや、こんな状況だからこそ、ダッシュという道は
免れない。こんな状態を敵に見られたらなんていわれるか。イヤミをぐちぐちぐちぐち継母みたい
にいい、なんだかんだに迷惑かけるに違いないのだ。元気に見せようと思っても、敵にはインサイ
トというすばらしくもっともイヤミなモノを持っているのである。だから、何をしても無駄。ああ、
クソ。本当にどうするか。

「あれあれ?ーどうしたの?」
「ジ、ジロちゃん・・・!」

ああ、やばい。ジロちゃんだ。ジロちゃんだ。いや、別にジロちゃんはいいんだ。ジロちゃんかわ
いいしかわいいしかわいいしかわいいからさ。でも今抱きつかれるのはいただけないかな。ちょっ
と今本当に無理だから。いや、でも今はジロちゃんを気にしている場合じゃない気がする。だって、
だってジロちゃんは、
「ジロちゃん・・・今何してるの?」
「俺今日偉いから寝ないで教室移動するんだよー!超偉いC−!えらいよね?」
「え、えらいえらい・・・」
「あれ?なんか元気ないね?どうしたの?」
「ど、どうもしないよジロちゃん・・・と、ところで私ちょっくら大事な用事ができたんだけど、な」
「なになに?大事な用事?」
「そ、そうなんだっ!ちょっと今すぐココを離れなきゃいけない用事が出来たんだ!」
「え、そうなの?残念だC−・・・」
「う、うん、じゃあ「アーン?テメェこんなところで何してやがる」

き、来ちゃった。今日最も避けたかった人物跡部景吾。ジロちゃんは跡部と同じクラスで、ジロち
ゃんが教室移動でココにいるということは跡部もいるということだ。だって跡部は一応クラスの中
ではジロちゃんを起こす事ができる唯一の人物。先生からも生徒からも、信頼を置かれている。だ
から一緒にいないはずがないのだ。そう、だから早くこの場を離れたかったのだ。コイツにだけは、
会いたくなかったから。

「あああああああああ跡部君、こここここここんにちは!」
「何してやがる」
「ななななななにもしてませんがなにかもんだいでもありますでしょうか
」 「・・・・・・・・・なんでそんなにどもるんだよ」
「べべべべっつにどもってなんかいねーよばっかやろー!」

何をいっていいのかわからない。頭が混乱する。早く逃げたい、逃げたい、逃げたい。跡部が怖い、
怖い、怖い。調子が悪い事がバレたら何をいわれるか、何をされるか、大体予想はつくからまた怖
い。走って逃げようと、右足を前に出したが、その前に跡部に手首をつかまれてしまう。

「待て」
「ななななななななんでしょう」
「・・・・・・・・・・・・ちょっとこっちこい」
「むむむむむむりですいまから授業がー!」
「アーン、テメェ俺様の言う事がきけねぇのかよ」
「聞きたくありませんー!」

問答無用、という言葉はこんな時に使うのかとあらためて思った。言葉では否定してるのに、身体
が思ったように言う事を聞いてくれなくて、跡部に引っ張られるままどこかへつれてかされる。周
りの人たちは「跡部様のお通りだ!」とかいって道をどんどんあけていく。いや、頼むからあけな
いで閉めとけよ、とも思ったが口に出せるわけが無い。階段を上らせれて、歩かされて、気づけば
生徒会室の前。跡部は生徒会室の鍵をあけ、パッと電気をつけて、クーラーをつけた。

「オイ」
「な、なんですか」
「そこのソファーに座れ」

跡部は有無を言わさない口調だった。怒っているようにも聞こえる。まあそれは仕方がないのかも
しれない。だって跡部は敵である。きっとこんな状況で私と戦いたくは無いのだろう。フェアだな、
跡部。跡部のくせして。すると、跡部は私のおでこに手をあてて、

「・・・熱、ヒデェじゃねえか」
「・・・べ、別に大丈夫だもん」
「大丈夫じゃねえ。帰るぞ」
「や、やだ!」
「やだじゃねえ、帰るぞ」
「むり!」

私が強情にそういい続けると、跡部は深い深い呆れたようなため息をついた。な、なんだよ、なん
か文句あるのかよ!いや、まああるんだろうけどね。跡部が文句を言わなかった日を、私は見たこ
とがなかった。

「・・・ったく、仕方ねえな」

跡部は私に毛布らしきものを投げつける。な、なんだ?と思いながら跡部を見ると、

「それかぶって寝てろ」

と、荒々しく言われた。少し悩んで、それが彼の優しさだということに気づく。帰りたくない帰り
たくないといったから、跡部は帰らないで、少し休めといいたいのだろう。というか、このままじ
ゃ絶対私が帰らないと思ったのだろう。図星である。

「あとべ」
「アーン?」
「・・・ありがと」

無言だけど、わかった、みたいな雰囲気だ。跡部は机に向かってパソコンを打っている。私はソフ
ァーにごろん、とねっころがり、毛布をかぶった。すると、段々頭がボーッとしてきて、いつのま
にか眠りについてしまっていた。









「ん・・・?」

目を開けると、そこには机に向かってパソコンをしている跡部。先ほどと変らない状況。変ってい
る事は只一つ、外の景色である。

「・・・あ、あれ?夕方?」
「起きたかよ」

跡部が私のほうを振り向き、近寄ってくる。冷たい、ひんやりした手が、私の額に触れた。

「さっきよりはマシになったな」
「い、今何時?」
「あそこに時計あるだろーが」

跡部が首で示した時計を見ると、もう5時である。さっき12時ごろだったから、およそ5時間の睡眠。
我ながら良く寝た。って、もう5時なら私の好きな授業も、部活も、全部休んだ事になる。ありえな
い、今日はそれだけを楽しみにしてきたのに。いや、それだけじゃないけれど。

「起きれるか?」
「お、起きれるけど・・・なんで起こしてくれなかったの!」
「気持良さそうに寝てただろ。バカな顔して」
「ちょっとバカは余計だから」
「まあいい、起きれるなら起きろ。帰るぞ」

いつのまに持ってきたのか、ソファーの下には私のカバンがある。私は毛布をとり、起き上がった。
吐き気や頭痛は先ほどよりマシになった。やはり寝た効果だろうか。ただ、本調子じゃないことは
確かだ。私がカバンをとろうとすると、横から跡部が私のカバンをとった。

「あ、跡部?」
「おら、行くぞ」
「それ、私のカバン・・・!」
「アーン?だからなんだよ」
「あ、跡部が持つなんて、何これ、夢?」
「テメェは俺様をなんだと思ってやがる」
「超自己中俺様跡部」
「なんだと?テメー・・・」

跡部はカバンを持ってない方の手で、私の頭をはたいた。でも、いつもはたかれるより痛くはなく、
逆に全然痛くなかった気がする。うん、フシギだ。本当にコレ、夢なんじゃないの?ためしに、跡
部の頬をつねってみる。

「・・ってえな!何しやがる!」
「あ、夢じゃない」
「そういうのは自分で確かめやがれ!」

今度は私のほっぺをむぎゅーってつねられる。痛い痛い、と騒げば、やっとの思いで離してくれた。
あれ?痛い?ってことはコレ、夢じゃないんだ。うん。逆にそれはそれで可笑しい。っていうか怖
い。跡部がこんなにも優しいなんて。おかしい。跡部もしかして私の風邪がうつったんだろうか。
それとも何か悪いものでも食べたのだろうか。ああ、想像しただけで恐ろしい。っていうかコレ本
当に跡部なのか?でも、後姿、身長的にもどうみても跡部である。

「あとべ」

私が名前を呼ぶと、なんだよ、といい、こちらを向く。なんか、本当にいつもと違うような気がす
る。ううん、違う。いつもと違って優しい。やっぱコレ跡部じゃないんじゃないか、そういう疑問
が頭に宿るのも仕方がないと思うんだけど。

「車用意させてある。行くぞ」
「・・・送ってくれるの?」
「アーン?何いってやがる。くるんだよ、俺様の家に」
「・・・は?」

私がきょとん、とした顔をしてると、呆れた顔で見られた。なんだその人を小ばかにしたような顔
は。クソ、なめてんのかコノヤロウ。腕をつかまれて、強く引っ張られる。あのさ、私これでも病
人・・なんていえる状況じゃありませんね、ハイ。そのまま私は跡部につれられて学校をでて、校
門の前に止まってる車に乗せられる。

「出せ」

跡部の一言で、車が出発した。いつもゆっくり進む風景も、今日は少しだけ早い。まあ、そりゃ跡
部の車にのってるからなんだけどさ。とりあえず、いつもより早く動く景色を見ながら、私はため
息をついた。これからどうなるのだろう。というか跡部の家にいくぐらいなら家帰って寝させてほ
しいのだけど。だってなんだかんだ気分が悪いのである。確かにさっきよりは治ったけど、でも本
調子ではない。跡部は何をしようとしているのだろう。跡部の脳内が全くわからない。いや、わか
りたくもないんだけど。

「おい、着いたぞ」

そんな事を考えている間にいつの間にか跡部邸に到着していたらしい。いつみてもドデカイ家だ。
うん、これはいっそ世界遺産にすればいいと思う。いや、遺産じゃないからダメなのか。ところで
跡部は何がしたいのだろう。難なく跡部の部屋に通されて、跡部は、ふう、とため息をついた。


「な、なにさ」
「こっち来い」

跡部様の命令には逆らえない、いや、逆らわない。故意に逆らわないのだ。私は跡部の横にちょこ
ん、と座る。でも、ちょっと警戒して。いやだって怖いじゃん。跡部が、跡部がだよ?恐くない?
私は怖い。


「な、なに」

甘い声で耳元で呼ばれて、ダメだこのエロボイス、妊娠するぞコノヤロウと思いながら、ほてった
顔を隠したくて。そんなことをしているうちに、ふわり、と温かい感覚が私の身体をつつんだ。

「・・・・・・・・・あ、あとべ?」
「・・・熱、まだあるな」
「う、まあね。跡部、うつるよ?」
「アーン?俺様がお前ごときの熱がうつるわけねぇだろうが」
「さようですか」

はあ、とため息をついた私。跡部は聞こえていただろうか。そのため息が。そして、また、耳元で
あの甘ったるしい声で一言。

「HAPPY BIRTHDAY 






優しい生日









───────────────────────────────────────────

HAPPY BIRTHDAY!みやこ様!

意味不明ですね。突っ込まないで下さい。
頼みますから突っ込まないで下さい。もう本当駄文ですいません。もう駄文すぎてすいません。
本気であやまります。いや、マジで。
っていうかタイトルからまず意味不明ですね。全然優しくないですよね。
風邪ひいてるところからして優しくないですよね。すいません。
ってことで、とりあえず、本当に遅くなりすいませんでした。スランプだといいながら頑張りました。
とりあえず頑張りました。なんだかんだ、跡部って本当どんなキャラだかわからないんですよ。
だっていつも私バカ(宍戸)しか書いてないんだもん。(え
とりあえず、お誕生日おめでとうゴザイマス。随分遅くなり申し訳ありませんでした。



黒姫夏優