なんで私たちがこんなことやらなきゃいけないんだろう、


それは、きっとみんなが思ったはず。




こんなこと、やりたくない。






1、ヶ丘学園生徒会






やりたくないなんていわせない。やりたくないなんていえない。それは、全ての権力
を握られているから。私たちは仕方なくこの学園に集まった。来たくもない。普通の
高校にいきたい。其のまま持ち上がってその学園にとどまりたい。そう思った。なん
で、なんで、なんで自分なんだ。何で私なんだ。どうして、こんなことさせられなきゃ
いけないのか。


学園は優秀な人材を求めている。それは学力、運動能力共に。その人材は学園が徹底
的に調べ上げ、中学にスカウトに来る。“もしもこなければ学校を潰す”と、金と権
力で脅して。そして、学園に高校受験をさせられる。勿論スカウトできた生徒は試験
なんてない。そのまま入学決定だ。学校を潰されたくない生徒はそうやって学園に入
り、寮に入って仲間、家族とは会えなくなる。そしてその生徒はその一年後───高
校2年生のときに“生徒会”に入り、学園を仕切り、そして学園の敵を潰すのである。
そのためだけに、その生徒は集められる。優秀な人材はテストをし、その順位によっ
て会長、副会長、書記、会計に分けられることになる。そしてその生徒達で表向きは
「生徒会」、裏向きは「学園の用心棒」となって働かされるのである───。




やりたくない、やりたくない。学校に戻りたい、戻らせて。


でも、いえない。いったら私たちの戻る学校は潰される。


だから、もう少し我慢して。我慢して。いつか、この学園をぶっ潰そう。


そう、私たちは誓った。









「会長おめでとう、跡部」
「フン、よくいうぜ、テメェは辞退したくせに」
「跡部がやりたそうだから譲ってあげたんだけど?」
「アーン?テメェが面倒だっただけだろ」
「そうともいう」
「じゃなくてそうなだけだろ」

跡部ははぁ、とため息をつきながら会長席に座る。跡部にはそれが似合ってるよ、一
番。私が誰かをまとめるなんかできっこない。私は自由奔放に生きるのが似合ってい
るんだって。


跡部景吾、氷帝学園出身。テストは満点で会長に選ばれた。200人率いるテニス部の元
部長、そして氷帝学園中等部元生徒会長である。そして私、も氷帝学園出身。
同じくテストは満点だったけど、私には元々生徒会長なんて向いてないのだ。だから、
跡部に譲った。まぁ跡部に押し付けた、といったほうがいいのかもしれないけど。だ
から今私は副会長。私はテニス部のマネージャーだった。だから、跡部やその他のテ
ニス部レギュラーとは仲がいい。仲がいいというか、よく一緒にいるというか、まぁ
そんな関係。

「ところで他のヤツ等はどうしたんだよ?」
「さあ?私に聞かないでよ」
「・・ったく、アイツ等は。8時に此処集合って連絡網まわしただろうが」
「うん、来たね。だから私ちゃんと同室のにいったし、そして宍戸にもまわした。
 そしては忍足にまわしたはずだけど」
「んで?なんではこねぇんだよ」
「ちょっとトラブったの。生徒手帳がなくなったの」
「またか────ったく、アイツは」

跡部は、ちっ、と舌打ちをして机の上にあるパソコンを開く。今日からこのパソコン
は跡部のものだ。これからこのパソコンで、先代の生徒会長がこなしていた仕事をま
たこなしていく。先代の生徒会長も氷帝生と聞いていた。どんな思いでパソコンに向
かっていたのだろう。どんな思いでこの学校にきていたのだろう。きっと、私たちと
同じ気持だと思う。私はここにきたいわけじゃなかった。ココにきたいわけがなかっ
た。みんなと一緒にいたかった。なのに、なんで。考え出してもキリがない。今は生
徒会にいて、この学園を潰すことだけを考える。いや、正確にはこの学園のこんなこ
とをさせている制度だけど。この学園の生徒達に、何の罪もない───なにせ、この
学園は表向きは「超難関私立学園」で通っているからだ。だからガリ勉からいろんな
やつまでいる。それは唯純粋にこの学園を受けたいと思っただけだろう。だから、私
はこの制度を潰す。もう二度と私たちのようなことが起きないように。


すると、ガラリという音がしてドアがあいた。出てきたのはロン毛の男と短髪の男。

「おそなってスマンなぁ」
「寝坊した、ワリィ・・ってお前等だけかよ」
「アン?おせぇよ、忍足宍戸」
「せやかて他のヤツラはどうしたん?は?」
は生徒手帳がなくなったーとかいって今探してるけど」
「自分、見捨ててきたん?」
が先にいってっていったんだよ、文句あんの?」
「いや、あらへんけどな」
「つーか跡部、テメェ千石と同室だろうが。つれてこいよ」
「俺様は理事長に呼ばれてたから早くでたんだよ。それにアイツのことなんかしるか」
「冷たいなぁ」
「うっせぇよ」

関西弁男、忍足侑士。テストでは3位という成績をとり、現在副会長を務めている。
ちなみに私たちと同じ氷帝学園出身である。何を考えているかわからない、というの
がホンネ。どちらかといえば、私の苦手な分類である。そして純情少年、宍戸亮。テ
ストでは10位という本当ギリギリの成績で書記を務めている。やっぱり、私達と同じ
氷帝学園出身である。宍戸は頼れる男、だと思っている。仲間を思いやる気持が人一
倍強くて、それでもって何事にも動じない。まぁ女子に対する態度が冷たいのがたま
にキズ、だけど。氷帝出身はこの四人である。まぁ生徒会に選ばれた10人の中で4人と
いえば多いほうなのだろうけど。

「にしても、遅くねぇ?」
「寝坊の宍戸ですらきたのにね」
「おい、それどういう意味だよ?」
「え、別に」

宍戸が私を睨んだけどかろやかに無視。私はため息をついて、自分の席にすわってパ
ソコンを開く。ピッ、と電源をいれてパソコンを起動した。そして各自の個人データ
を、パスワードを入れて開いた。このデータは私と跡部しか持つことを許されていな
い。別に信用していないとか、そうじゃなく、これは特権なのだ。


1位という、特権。


「寝坊の記録は丸井と仁王と千石と宍戸・・だけか、ついてるのは」
「おい、それなんだよ」
「人の個人情報」
「・・・・・・・・・・特権やな」
「そう、特権」
「あーん?誰だよ、丸井と仁王を同じ部屋にしたのは」
「「「お前だろ」」」

呆れて跡部を見ると、跡部はしらばっくれて顔をそらした。仕方ない、と呟いて私は
携帯を取り出す。忍足も、宍戸も同じように取り出した。

「でも不二と佐伯はどうしたん?」
「知るか。またサボりだったりしてな」
「よし、忍足は不二、私が仁王、宍戸千石ね」
「オイコラ待てや。俺が一番つらいんとちゃうか?」
「じゃぁ誰が不二にかけるっていうのさ。同じ天才という間違った異名を持つ者同士
 でしょ。やれ」
「命令形・・・!ホンマ自分跡部と似てきたな!?っちゅーかまちがっとらへんし!」
「間違ってる間違ってる。いろんな意味で」
「同感」

私と宍戸がうんうん、とうなずくと、忍足は隅っこ体育すわりをしてのの字を書き始
める。だからお前はウザキャラなんだよ。どこにいっても。成績は悪くないのに。と
りあえず忍足の背中を一蹴りして、携帯電話を開いた。

「仁王・・仁王っと・・ほら、早くお前も不二に電話しろよ」
「横暴や・・横暴や・・」
「早くやれっていってんの。ホラ、宍戸もやりはじめてるし」
「っちゅーかなんで跡部はなにもしないん!?」
「何で俺様がやらなきゃいけねぇんだよ」
「跡部ならそういうと思ったし」

忍足は深い深いため息をついて、携帯をとりだす。うん、よかった。正直私は不二と
佐伯が苦手だ。まあ、仁王もそうだけど、昔馴染みということもあるし。だからまだ
マシってやつ?やっと仁王の電話番号を探しだした私は、その番号に電話をかけた。
プルル、プルル、と2回ほど呼び出し音がなる。

『もしもし・・』
「もしもし、じゃない阿呆」
『なんじゃ・・か・・』
「なんじゃ、じゃない。今何時だと思ってんの」
『・・・8時半』
「そう、8時半。集合は8時」
『・・・俺は眠いんじゃ』
「へえ、そう。だから?」

眠そうな声でいう仁王に、呆れる私。全くもってありえない。仮にも生徒会だ。不可
抗力としてでも。なんでコンナヤツが選ばれたんだろう。本当に不思議である。

「今から丸井起こして早く来て」
『面倒・・』
「 は や く ! 」
『わかったぜよ・・・』

仁王は眠そうな意識を必死に覚まさそうとしている。全く、生徒会と言う自覚がない
のかお前等は、といいたかったけど、私自身そんな自覚なんてない。これは、作戦な
のだ。それを忘れちゃいけない。

「仁王たちには連絡ついた。そっちは?」
「・・・今から来るっちゅーてたで。めっちゃ怖かったんやけど!」
「仕方ないよ。・・・っと、からメールだ。もう着くって」
「わかった。おい、宍戸。そっちはどうだ」
「・・・・・・・・・・・・・今起きたってよ。あと30分したら来るって」
「アーン?10分で来いってメールいれとけ。・・・こっちも、メールが入ったところ
 だからな」

跡部がだるそうに言った。多分、仕事についてだろう。何をさせられるのだろうか。
想像もつかない、いや、想像したくない。私たちは何があっても、今は学園に手を貸
さなくちゃいけない。“今”は。そのとき、バタン、と勢いよく生徒会室のドアが開
いた。そこにいたのはかわいらしい、女の子。────生徒会のメンバーである。

「ごめん、見つかった!」
「よかった。どこにあった?」
「前の学生カバン。ほら、2年になってかえたから、それだけ移動するの忘れちゃって」
「そっか、まあ見つかってよかった」

。成績8位。副会長。勉強のテストは満点だったが、やはり運動の方だろう。
男子と女子は同じ評価なので、そこで少し落としたらしい。不動峰中テニス部マネー
ジャー出身だから、何度か会ったことはあった。まさか、ココで一緒になろうとは思
わなかったけれど。可愛らしいちまちまとした彼女は、この生徒会のアイドルみたい
なものだった。

「遅え」
「ごめん跡部!・・・っていうか、まだこれだけなの?」
「後のヤツラは寝坊とか、・・・そういえば、不二達の理由は?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・面倒くさかった、や」
「・・・相変わらずだな」

他のメンバーはあと5人。成績4位の不二周助。青春学園中出身。会計。テニス部だっ
たらしく、天才の異名を持つ、穏やかで腹黒い一面(というか、もう殆どそれ)をも
つヤツだ。別名、生徒会の魔王である。成績5位の仁王雅治。立海大付属中出身。書記。
テニス部で、詐欺師という異名を持っていたらしい。私とは幼い頃、一緒に遊んだ記
憶が何度かある。その頃もだが、未だに何を考えているかわからないところがある。
成績6位の佐伯虎次郎。六角中出身。会計同じくテニス部で(というかこの生徒会はテ
ニス部しかいない)何気にイケメンっていうか爽やかな顔をしている。不二と大変仲
がよく、一緒にいることが多い。怒らせると不二と同じぐらい怖いとも言われている。
別名、第二の魔王である。成績7位の千石清純。山吹中出身。会計。テニス部(もうお
決まりである)で、あだ名はラッキー千石だったらしい。ラッキーセブンで、7位か、
と思わず納得してしまった。でも、この生徒会に選ばれた時点で果たしてラッキーな
のか。それはフシギである。女の子大好きでナンパ大好き野郎。も、私も、何度
ナンパさせられたことがある。成績9位の丸井ブン太。立海大中出身。書記。テニス部
で、大の甘党。冷蔵庫にケーキなどが入っている事があれば、次の日には必ずなくな
っていた。大方、コイツのせいだろう。仲間には熱い、とみた。でも殆どよくわから
ない。なにせ、コイツとは一年間一緒にいてもあまり関わってはいないからだ。部屋
はだいたい同じ中学校、仲の良さでわけられている。そう、跡部が考慮した。私と
は女の子同士って意味で、丸井・仁王、宍戸・忍足は同中のよしみ。不二・佐伯は元
から仲が良かったから。あとは余った跡部・千石なわけである。でもこの部屋割り、
あまりよくないとみられる。まず仁王と丸井が一緒なことがおかしい。あの二人が起
きれるはずがないのだ。そう、今日のように。不二と佐伯は問題はない。唯、面倒く
さがっているだけだから。忍足と宍戸はいささか真面目だから。千石と跡部は、まあ、
跡部がシッカリしていれば大丈夫だろうとは思う。

「・・・・・・・・・・・で、仕事だ
「・・え?仕事?・・・早いね。もう?だって今日一日目だよ?」
「それだけ、早く仕事に慣れさせたいんだろう。・・・慣れたくもない」
「チッ・・・うぜえ」

舌打ちをする宍戸と私に、跡部は眉をひそめた。跡部は何も言わない。このことが決
まって、文句を言う私と宍戸とは対照的に、跡部は何も言わなかった。一番責任が重
いのは跡部。そしてそれを押し付けたのは、私なのに。跡部は少しだけため息をつい
た。

「・・・どこで誰が聞いてるかわかんねぇぞ、口を慎め」
「・・・・・ああ、ごめん」
「まだアイツ等は来ていないが、仕事の内容だ。その前に、これから仕事は二つの班
 に別れて行動することにする。A班は俺が中心で、忍足、千石、、不二。B班は
 が中心となって、宍戸、仁王、佐伯、丸井。いいな」
「おい、待てよ」

そこで宍戸が口を挟む。跡部は面倒くさそうに、ゆっくりと宍戸のほうを向いた。

にやらせるのは、どうかと思う。は一応女なんだし────」
「宍戸」

言いかけた宍戸の言葉を遮って、私は宍戸をまっすぐ見た。宍戸は一瞬ひるんだが、
しっかり私の目を見た。

「女とか、そういうの。この生徒会には無用だ」
「でも、危ないかもしれないだろ」
「危ない?何が。何も危なくなんて無い。女だから?女だとなんで危ないの。力の差?
 そんなの私は感じさせない。宍戸はいつも昔から───」
「やめろ。・・・宍戸も、がこういっているんだ。他に何かあるか?」
「・・・いや、ない。悪かったな」

跡部はまた深いため息をついた。この状況が気に食わないらしい。そりゃ皆一緒だろ
うけど。宍戸はまだ、何かいいたそうな顔をしているけど、そんなの私は受け付けな
い。

宍戸はいつも昔から────、いつも昔から、そうやっていってた。何かあるごとに、
危ない、だとか。ダメだとか。そういう否定的な言葉ばっかりいってきた。だからや
りたくなるのだ。挑戦してやりたくなるのだ。───まあ、昔の話しだけど。今はや
らなきゃいけない状況下にある。何を心配してるのか仕方ないけど、宍戸はそうやっ
て、私をいつも気にかけてた。宍戸は話をそらすように、どんな仕事なんだ?と跡部
に問う。

「3年のヤツラがヤクザに入ったらしい。そのヤクザを潰せということだ」
「ああ、何かあったらこの学園、危ないもんな」
「そやな───初めてがヤーさん潰しっちゅーのも、また変な話やな」
「この学園自体が変なんだから、仕方ないだろ」

そのとき、ガチャ、と音がして残りの5人がゾロゾロと入ってきた。眠そうなのが3人
と、クスクス笑っているのが2人。なんて悪趣味な。説明し終わった後に入ってきやが
って───と、跡部は呆れた様子で、忍足に説明しろと命令した。

「え、なんで俺なん!?」
「うるせぇ、さっさと説明しろ」
「・・・なんちゅー横暴な」

忍足が説明している間に、、と跡部に手招きされた。跡部の近くまで行けば、跡
部にネクタイをぐいっと引っ張られ、耳元で何かを言われた。

「                            」

だからさっき、跡部は私たちに眉をひそめたのだと知った。はあ、とため息を漏らす
と、前髪を手でかきあげた。女らしくねえな、と跡部に笑われる。うるさい、と返す。

「わかった。じゃあ跡部、そっち頼む。私たちが行くよ、ヤクザのほうは」
「ああ、悪いな。気をつけろよ」
「ん、わかってる」

いつの間にか説明が終わっていたのか、皆してこっちを見ていた。宍戸は少しだけ心
配そうな顔をして私を見ている。全く、昔から本当にコイツだけは変わらない。全て、
昔から、心配してくれてる事だけはわかっていた。この心配性め。ココでは命取りに
なるぞ、って、いつも言いかけて、やめてしまう。でも、直にわかるだろう。多分。

「・・・・・・・・・最初は私の班がいくことになった」
「ああ、じゃあ俺達だな」
「緊張するね、少し」
「緊張?佐伯が?珍しいのぉ」
「仁王は緊張なんてしなさそうだよね」
「何いっとるんじゃ、心臓バクバクじゃよ?」

笑いながら言う二人は、多分心の中では全然笑っていないのだろう。近くに引っ掛け
てあったブレザーを来て、ドアのほうにまっすぐ歩いていく。これから、私たち生徒
会の戦いが始まる─────────────。




跡部は、言った。


「監視カメラが3つある。発言には充分気をつけろ、そうじゃないと───」





大切なものが潰されるぞ。











昔書いてたものを書き直したもの。
何気気に入ってます。