「ふざけてる・・・!」



私が手に持っているのはこの前行われた一斉テストだったりしなかったり。まさか、まさか、こんな
点数をとるなんて。まぁね、まぁね!私が苦手なのはコイツ、天敵数学野郎だけだし。そう、コイツ
だけだよ。私に刃物をむけるのは!ああ、今日は絶対部活なんかにいきたくない!









「で、テストの結果はどうだったんだよ、アーン?」

部活なんかにいきたくない。部活なんかにいかない。部活なんて休んでやる!そんなことを思ってい
たのに、放課後になって私の教室に現れた跡部景吾。お前、ウザイ。私は跡部部長率いる氷帝学園男
子テニス部のマネージャーだったりする。別に誰と色恋するわけじゃなく、ただ単に一緒にいて、笑
って、泣いて、青春したりする。そんな関係だった。ただ、その中の“笑って”にはレギュラー→私
に向けられるイジメ(からかい)が多く含まれている。いや、レギュラーの中にも私の味方になって
くれる人はいるけどね。宍戸とか、ジローとか。逆に8人中2人だけだけどね。でもその中で先頭にた
って私をイジメ(からかい)てるのは、今目の前に仁王立ちしている跡部景吾だったりするのである。

「そこ、どいて」
「アーン?今から部活だろうが」
「頭イタイお腹痛い、死にそう。だから帰る」
「なら病院でもいくか?俺様が手配してやる」
「いい。一人でいく」
「アーン、行かせるかよ。・・・フン、まあいい。早くいくぞ」
「いーやーだー!」
「テメーはマネージャーだろうが。オラ、文句いうんじゃねぇよ。歩け」
「跡部のハゲー!」
「俺様はハゲてねえ!」

腕をつかまれながら歩くのはとても嫌だ。周りからの視線が痛いほど気になる。この美形だけどとて
も性格の悪い男はなぜか学園一モテる男だった。なぜか。だから私だって何かと他の女生徒からイジ
メをうけたこともあるし、呼び出されたこともある。でもそんなことで臆する私じゃないし、神経も
弱くないし、喧嘩も弱くない。相手を睨んで、やりたきゃやれば、その代わりその後どうなってもし
らないよ、といっといた。そして本当にやってきたやつにはボコボコにしてやった。へへん、ざまー
みやがれ。まあそんなこんなでこの美形に腕つかまれて連れて行かれると目立つわけですよ。目立ち
たくなんてないのに、こんな男のせいで。キッと睨んでも、睨み返される。こんな男、大嫌いだ。どっ
かで逃走してやる。必ず逃げ切ってやる。足には自信があるぞ。跡部・宍戸には負けるけど。しばら
くしたところ、下駄箱あたりで、あれ?という声が聞こえた。

と跡部やんか、何してるん」
「コイツを部活につれてこうとしてんだよ」
「頭いたいーお腹いたいー死にそう」
「・・・ほんなら俺が見たろうか?何が起きてもしらへんけど」
「死ね」
「で、ホンマになにしてるん」
「だから部活につれてこうとしてんだよ」
「それはさっき聞いたわ。なんでそんなことしとんの」
「コイツが帰るっていったからに決まってるからだろうが」
、なんで帰るっちゅーたん?」
「跡部がうざいから。忍足がうざいから」
「今日テスト返されただろ。だからだ」
「あー・・そや、賭けや!自分、大威張りで賭けたんやから勿論勝ったやろ?」

忍足は、ニヤニヤと笑いながら、私を見てくる。ちょっと、キモイからやめてくんない?それにおお
威張りは余計だって。否定できないけど。そうなのだ。私は賭けていたのだ。コイツ等と。跡部・忍足
・岳人・ジローで、今回のテストの賭けをしていたのだ。教科は先週行われた一斉テスト(中間・期末
とは別。実力テストみたいなもの)の英・数・国だった。幸いなことに、私は国語・英語は得意だ。
今回も88、92という高得点をとっているからそれは大丈夫なのだ。まあとりあえず、何を賭けている
のか、といえば、

「『私より上位のヤツがいたら一週間奴隷になってやる!』」
「・・・・・・・・・跡部、頼むからやめてくれないかな、その録音テープ」
「アーン?テメェが言い逃れできないようにするためのモンだろーが」
「わかったからもう流さないでくれるかな!毎日毎日毎日!トラウマだっつの!」
「フン、とっとと部室いくぞ」
「だから頼むからそれ流したままにするのやめてくれないかな!」
、跡部に何いっても無駄やっちゅうことはわかっとるやろ」

わかってるけど、ムカつくんだよ!とりあえず私を部室に連れて行く人が一人から二人に増えたとこ
ろで逃亡は難しいという事になってしまった。








「お、来た来た!!結果でたな!」
「私岳人に勝てる気はあるよ」
「なんだと、クソクソ!ちょっと国語と英語が頭いいからって調子乗るなよ!俺は数学得意だ!」
「うるさい!数学なんてこの世になくていいもののことなんてしるかあ!」
「いや、数学はこの世に必要やで」
「忍足うるさい!」

私が叫ぶと岳人が耳を塞ぐ。失礼なヤツだ。すると、そばにいた宍戸が、でもよ、と切り替えした。

「お前国語と英語はバカみたいに頭いいじゃねえか」
「宍戸、日本語変」
「うっせえ。・・・だから、お前それだけなら数学がたとえ0点でも岳人とジローになら余裕で勝てる
 んじゃねえか?」
「私数学流石に0点はないから!」
「例えだっつっただろ!」

宍戸は半ば怒鳴りながら、ネクタイをとった。どうやら苦しかったらしい。まあ私もネクタイは嫌い
だけどね。でも、考えてみればそうかも。88+92=180。えっと、180を3教科で割ればいいわけだから、
平均60点。岳人とジロの平均が60以下なら、私は楽勝に勝てる。だってこれは私の数学の点数をいれ
てないんだから。ってか私数学できてね?頭よくね?

「よし、私岳人とジロには余裕で勝てるわ!」
「でも俺数学90以上だぜ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
「いや、今回の数学マジ簡単だったじゃん。なあ、宍戸」
「まあな、俺でも軽く70はいけたぜ。・・・俺でも。でもお前だってそれくらい軽くいってんじゃね
 えの?いくら苦手だっていったって」
「・・・・・・え、え、ちょっとまって、今宍戸なんていった?」
「いくら苦手だっていったって」
「その前」
「例えだっつっただろ」
「その少し後」
「俺でも軽く70はいけたぜ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」

70、70っていいましたよこの人!あのバカで有名な宍戸君が、数学で70!ちょっとひどい。私より点
数がいいなんてかなり酷いよ。ヤバイよ。いろんな意味でやばいよ。どうしよう。

「オイ、顔色悪いぜ。大丈夫かよ」
「い、いや・・・宍戸、な、ななじゅう?」
「おう」
「宍戸が?」
「おう」
「バカな宍戸が?」
「バカは余計だ」
「・・・あ、ありえない・・・」

しょんぼりとする私に、宍戸が、お前俺より悪かったのかよ、と呟いた。反論する気力もない私は、
とぼとぼとドアに向かって歩き出す。それにいち早く気づいた跡部は、私の前に立ちふさがる。

「・・・どこいくんだよ」
「空気吸ってくる。新しい空気」
「カバンおいてけよ」
「こんなかに私の酸素ボンベが入ってるから嫌」
「酸素ボンベがはいってるなら新しい空気もソレで吸えよ」
「自然の空気がすいたい」
「残念だな、ココはバリバリ都会だ」
「外の空気が吸いたい」
「なら俺様も付いていってやる。感謝しろ」
「遠慮する。つか、くるな」

ああ、宍戸に負けた事がこんなにもショック。だってそうじゃない?とりあえず国語・英語は跡部と
首位を争う私が数学で宍戸に負けたんだよ?学年で下から数えたほうが断然早い宍戸に、私が負けた。
確かに今回の数学の結果は散々だったけど、今までたとえ数学でも宍戸似負けた事はなかった、ハズ。
しかもかなりの点数を付けられている。宍戸が70なら、軽く20点以上の差がある。どんだけだ私。今
流行の言葉、“どんだけえー”。マジ、ふざけてるよね。だから逃亡を図ろうとしたのだ。ここから
出て、出たらすぐ全力疾走でもしようと思ったのに、あろうことか跡部が読んでやがった。流石学年
1位。頭のよさは伊達じゃない。でも今回そんなコイツに私は屈しながらも下克上しようとした。あ、
日吉ごめん。ちょっと言葉借りるよ。勿論、勝てると自信満々で、

『跡部なんかにこの様が負けるとでも思ってんのかー!』

といってしまった。まあ最初は跡部のヤロウが私を挑発してきたんだけど。私は挑発ぐらい簡単にのっ
てやるさ。それで、勢いにのってあんな約束をしてしまったのだ。最初は跡部とのみだったのに、い
つの間にか忍足が加わって、岳人が加わって、ジローが加わって、こんなことに。宍戸はなぜか、俺
は遠慮する、とかいって引き受けなかったけど。まあ自分がバカで私よりかなわないんだろうな、って
思ったから何にもいわないでおいた。とりあえず、私に分がないのはあまりにも不公平だからちゃん
とつけました。私より下になったら私に500円以下のものなんでもおごってくれる。でも一週間奴隷よ
り500円以下方がいい。断然いい。ちょっとズルいと思った。

「で、さっさと結果だせよ」

延ばし延ばしにしたことにいい加減イライラしているのか、怒った口調で跡部がいった。他のヤツ等
も、うんうん、とうなずいている。とりあえずジロは?ときくと、宍戸が私の足元をを指差した。足
元をみるといつの間にか私の足にしがみついていた。

「ジロ・・いつからいたの」
「さっきからずーっといたC!!気づいてよ!」
「あーごめんごめん」
「でも起きたのは今だけど」
「だろーね・・・」

私が半分呆れながらもそう答えた。あ、でもよ、とそのとき岳人が提案をする。

だけ見せるってなんかかわいそうじゃねえ?みんなで一気にだそうぜ、一気に」

それはナイスアイディアだね岳人君、君もたまにはイイコトいうじゃねえか!するとみんなは準備し
てあったかのように取り出す。宍戸のも見せてよ、といっても、首を横にふって、嫌だ、の一転張り
だ。まあしょうがないか、バカなんだから。

「じゃあいっせーのせ、でだそうよ!」
「おー」
「いっせーのせ!」









「あー、おいしいなあ。肉まん」
「クソクソ!お前なんで英語が92なんだよ!」
「国語88って・・・お前本当に頭いいな」
「当たり前でしょ!」
「それでも数学は34」
「数学が足引っ張ったなーチャン?」
「う ぜ え !」

結果発表!
最下位が結局岳人で、34・96・44の174。つかなんだかんだいってこの数学の点数はなんだ。っていう
か後の二つの点数は一体。
その次がジロで、66・87・59の212。私超ギリギリじゃない?やっぱり数学はいいらしい。なんでだろう。
んで奇しくも真ん中の私、が88・43・92の合計223。うん。でもいいほうだと思うよ。特に両側。
その次が忍足で、79・98・84で261。うわ、コイツ本気で頭いいわ。ムカつく!
んでもってやっぱり一番いいのは跡部、なんですが。

「っつーかよ、俺初めてみたぜ、オール100点」
「こりゃ勝てねーよな。コレより上がねーんだもん」

そりゃ勝てませんよ。だってコレより上がないんだもん。っていうことで岳人・ジロは私に500円以下
のものを奢る。私は跡部・忍足の一週間の奴隷に決定したわけである。にしても本当になんなんだろ
うこの点数は。ふざけてるにもほどがある。ってことで私は岳人に一番高い肉まん(300円也)とジロ
に一番高いムースポッキー(200円くらい)を買ってもらった。ジロのが安いって文句いってたけど、
それは点数の差だ、仕方ないって。

で、問題の奴隷問題なんだけど。

「っつーことで
「嫌だ」
「まだ何もいってねぇだろーが。これからお前は一週間俺様の奴隷だ」
「嫌だ」
「アーン?文句いうならコレをいった自分に言え」

そういいながら、録音を再生する。あーもう本当にやめてってば!っていうと、鼻で笑われた。あー、
本当コイツムカつく!

「あ、ついでに俺も忘れんといてな」

うっさい忍足。はあ、と深い深いため息をついた。

そのとき、でもよ、と宍戸が呟いた。




「お前他の教科はできんのに、数学が出来ないって、天才とバカは紙一重、ってヤツ?」




宍戸、それは違うと思う。









天才とバカは一重








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初めまして、黒姫夏優です。
提出期限ギリギリですいません。
これは本当にギャグっぽくかかせていただきました。笑っていただければ嬉しいです。
では。これにて。