笑ってくれた君と過ごせた日々が、幸せでした。








笑ってくれて幸せでした。

泣いてくれて幸せでした。

怒ってくれて幸せでした。


───────────────君に出会えて、幸せでした。




雪がしんしんと降っている。もう冬だ、雪が降るのは当たり前。でも、とても珍しく思えたんだ。
俺はガラにもなく手に、はぁー、と息をふいて、手を温めた。彼女がいたなら俺の手を握ってくれ
ただろうに。彼女がいたなら、そう思うことしか出来なくて。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ」

そう、ため息つくことしかできなかった。其の息は白くなって、上へ少しあがった。別にいなくなっ
たわけじゃない。連絡すれば、あえるし、声も聞ける。笑った顔だって見れるんだ。

────────でも。

「・・・・・・・メール、か」

どうしても出来ない自分がいる。携帯をポケットからだして、またため息。別に俺から連絡すれば
いいのに、メールなんか待たなくてもいいのに。どうしても、彼女からのメールを待ってしまう俺
がいて。

「・・・・・・・・激ダサ」

上を見上げて、呟いた。雪は降るのを止めずに、地面を白に染めていく。俺は白が嫌いじゃない、
彼女が白を好きだから。でも今は見たくない色だった。でもそんな白い雪の上を俺は歩いている。
マフラーに口をうずめる、これも彼女からもらったマフラーだ。これを俺に渡してくれた彼女は、
照れくさそうに、でも嬉しそうに、笑ってくれた。そんな表情を思い出して、また、はぁ、とため
息をついた。


喧嘩したわけでもない、唯のすれ違いだった。受験生の俺と彼女、俺はそのまま大学へいくけど、
彼女は違う。外部へと、受験するのだ。前から俺とは頭の出来が違う彼女ならば当然の事かもしれ
ない。夢を叶える彼女にとっては当然の事かもしれない。でも、俺はもっと一緒にいたかった。彼
女が受ける大学は別にそこまで離れてるわけではないけれど、一緒にいられなくなるのは確実。高
校でたら一緒に住もう、とか言えばいいんだろうけど、あいにく俺にはそんな甲斐性も度胸も無か
った。まだ、彼女一人を幸せにすることすら、不安なんだ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・やっぱり激ダサ」

そう、自分を責めることしかできなくて。彼女は勉強で忙しくて。俺はもう、大学合格が決まって
いる身だから、彼女の邪魔をしないようにすることしかできない。それでもやはり顔を見れないと
寂しいもので。何度も何度も、電話を掛けかけたり、メールを打ちかけたりする。けど、其の手は
途中で止まって。邪魔をしてはいけない、と自分に言い聞かせるんだ。そして、今日もあてもなく
歩き続けている。一人でいると、不安なんだ。

「・・・あれ?宍戸さんじゃないですか?」

突然、後ろから懐かしい声が聞こえた。振り返れば、後輩二人の姿がそこにある。

「・・・・・・・・・・・・よぉ」
「どうしたんですか?一人で」
若に聞かれて、俺は苦笑する事しかできない。制服にコートをきて、マフラー巻いて。今日は休日
だから多分部活帰りだろう。ちょっとだけテニスが恋しくなった。

「・・・・・・・・ちょっと、な」
「あ、宍戸さん!大学合格おめでとうございます!」
「おう、サンキュ」

長太郎が嬉しそうに俺にいうので、俺はとりあえず笑っておいた。それがホンモノの笑いかどうか
は、別として。そんな俺に若は気づいたのか、少し浅いため息を吐いた。

「・・・・・・・・・・さんは、調子どうですか?」

わかって聞いてるんだろ?俺が連絡とっていないって。そう苦笑すると、勿論、といわれる。長太
郎は若の隣で一人ハテナマーク、コイツはこういうことに弱いからな、と苦笑。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・頑張ってると思うぜ?」
「そばにいてあげないんですか?」

本当、若ってキツいな。俺は苦笑する事しかできない、けど若は俺の目をずっと見ていた。あぁ、
知ってる。お前だって俺の彼女を好きだった一人だもんな。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・彼女は、寂しがってると思いますよ」
「・・・・・・・・・あぁ」

少し感づいてはいたけれど、それが勘違いだったらどうしよう、という気持ちでいっぱいだった。
会いたくてたまらないのは、あっちも同じだと、自惚れたくは無かったんだ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・跡部さんが言ってました」
「跡部?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・宍戸さんは、彼女を買いかぶりすぎだと」

どういう意味だよ、と突っかかりたくなった。お前に何がわかるんだ、と。いったのは、若じゃな
く、跡部なのに。

「彼女は意地っ張りなだけで、本当はとても寂しがりやなんですよ」
「まるでうさぎさんだね!」

横から長太郎が助言するが、お前は空気が読めないのか、といいたくなる。俺は静かにため息をつ
いた。そんなことは俺が一番良く知ってるんだよ。恐い夢を見たら電話をかけてきて、朝まで一緒
にいて、だの。眠れないから亮の家にいく、とか無茶苦茶なことをいって。何時も俺を困らせて。

「・・・・・・・・・・・・・・・宍戸さんも知っているなら、何故いかないんですか?」

勉強の、邪魔になると思って。彼女にとってこれは大切な事だから、きっと邪魔になると思って。
そう、思った、いや、思うようにしてた。でも、本当は違ったんだ。

─────────────彼女の離れる準備を、間近で見たくなかっただけなんだ。

「宍戸さんは逃げています。彼女はきっと寂しがってるはずです」

そして、彼女は意地っ張りだから。そう、彼女は意地っ張りすぎるんだ。恐い夢を見た、だとか眠
れない、だとか。くだらないことなら電話を掛けてくるのに。そばにいたい、といってくれるのに。
本当に寂しい時は、電話も、メールもよこさないで。唯一人、懸命に耐えて、がんばって、泣きそ
うな顔して。俺が一番、よく知っているじゃないか。

「・・・・・・・・・・・・・若、サンキュ」

俺は今まで何をしてたんだろう?そう、思いながら地面を蹴る。雪で滑りそうになりながらも、走
った、彼女の家まで。ここまで彼女を放っておいたのは、俺の意地っ張りで、すれ違いでもなんで
もなかった。俺が彼女を、避けていただけなのだ。学校でもクラスが違うから、彼女のクラスに行
こうともしなかった。彼女も勉強が忙しいから来れるはずも無く、いつもいつも顔が見ない日々が
続いて。そんな時、アイツはどうしてた?どうやって、寂しさを耐えてたんだよ?

「・・・・ついたっ・・・・」

久しぶりに息を切らして、上を見上げる。普通の一軒家、二階の部屋が彼女の部屋。明かりはつい
ていて、勉強でもしているのだろうか。さて、これからどうしよう。俺はポケットに入ってる携帯
を取り出し、アドレス帳を開く。

000番─────

それに合わせれば、番号とアドレスがでてくる。番号を押して、電話を掛けた。プルル、プルル。
家の中からの着信音が外にも聞こえてくるような気がした。実際は、俺の耳元でなっているだけだ
けど。

『はい、もしもし?』

変わらない、彼女の声。いや、変わっていた、少し寂しそうな、泣き出しそうな、そんな声。

「・・・・・・・・・・もしもし、俺だけど」
『・・新手のオレオレ詐欺ですか?』
「新手じゃねぇし。俺だよ、宍戸」
『・・・・・・・うん、しってる』

悲しそうな、声が聞こえる。泣いているのだろうか、少しだけ声が触れていた。

「今から、出てこれるか?」
『・・・少しなら』
「近くの公園で、待ってる」

そういって、ピッ、と電話を切る。俺は本当は家の前にいるのに、でもそんなことはいえずに、近
くの公園へと向かった。雪が降っているのに、誰も子供達はいない。普通子供達は遊びまわるもん
じゃねぇのか?と思ったけど、かえって好都合。それから数分たって、彼女が来た。

「・・・・・・・・・・どうしたの?」

そこには笑顔が無かった、ただ、寂しそうな表情。少しやつれただろうか、弱っている風にも見え
た。

「・・・・・・・ごめん」
「・・・・・・・・・・・・・・なにが?」

俺が頭を下げると、彼女は少しだけ、笑った。意味がわからない、という感じだったけれど、本当
はわかっているんだろ?俺が何故謝っているか。

「・・・・・・・・・・私、亮に謝れるような事何一つされてないよ?」
「お前を一人にした」

彼女の肩が、ビクッと震える。ほら、また強がって。寂しかったんだろ、ごめんな。俺の意地のせ
いで、わがままのせいで、いられなくてごめんな。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・私、大丈夫だよ?」
「ごめん」

俺は、泣きそうな彼女を、謝りながら抱きしめる。ぎゅっ、と、強く、強く、離れないように、離
さないように。

「・・・・・・・りょ・・・うっ・・・」

彼女の嗚咽が聞こえる、泣いているのだとわかる。其の声は震えていて、俺を抱きしめた。

「・・・・・私・・離れたくないよ・・・ッ・・・お願いだから・・・」

恐いよ、と泣いていている彼女を支えて。震えている身体を抱きしめて。唯、彼女の話を聞く。

「お願いだから・・・っ・・・離れていかないで・・・っ・・・」

あぁ、俺は何て事をしてしまったのだろう。俺の意地のせいで、ここまで彼女を一人にして、恐が
らせて。ごめん、ごめん、といくら謝っても足らないけれど、俺にはいうことしかできなくて。彼
女を少しだけ俺から離して、彼女に口づけをする。

「・・・りょっ・・・う・・・」
「・・・・・・・・・・・好きだ、

離れたくない、といった彼女に、離れない、という。俺はお前とずっと一緒にいるよ、と。大丈夫
だ、と。それから俺等は何十分たったかわからない、ずっと抱き合っていた。









「りょう!りょーお!」

パタパタと俺に駆け寄る彼女は、嬉しそうな顔をしている。若と長太郎に勉強(社会のみ)を教え
ていた俺は、彼女がここにいることに驚いた。若は笑っているし、長太郎も嬉しそうだ。

「みてみて、合格通知!うかったよ!試験!」

自慢して通知を見せるに、俺はよかったな、と笑いかける。あれから俺と一緒に(というより俺はそば
にいただけだが)勉強をしたは、万全な体制で試験に挑んだ。絶対受かる、と意気込んでいたから、
受かるとは思っていたけど、本当に受かるなんて。俺も少し嬉しくなった。

「でもよかったです・・・宍戸さんとさんが仲直りしてくれて」
「え?別にケンカなんかしてないよ?」
「でも気まずかったじゃないですか・・・俺、心配したんですよ?」

長太郎が子犬の目でにいうと、少しは笑った。そして、長太郎の頭をなでた。俺は少し嫉妬したけど、
まぁ長太郎だからな、と思い直す。

さん・・手、貸してくださいっ」

長太郎がおもむろにそういえば、は、え?といいながら手を差し出す。すると、手の甲に、ちゅっ、
と軽く落とした。

「ちょ、長太郎君・・・!?」
「奪っちゃいましたv」

明るく言う長太郎に、俺は我慢の限界。立ち上がって、俺は怒鳴る。

「長太郎―――――――――!!」
「わわっ・・・宍戸さん怒らないで・・・っ・・いたい、いたいいたい!殴らないでくださいよう!」

俺は長太郎を殴りまくる。長太郎は涙目で、若は其の様子を笑ってみてる。そしても笑っていた。




彼女の其の姿が、ずっと俺の隣にあればいいと思った。










ああ、しいひと。








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ああああもうどうしようもうない駄文だよねコレ!!
だってこれ前買えたヤツで加筆修正なんてしてないもん名前かえただけだもんだって面倒だもーん!
あーもう駄文だから駄文だからああ!(ええ