「・・・・・・・・・・・・・・はあ」
「なんで俺の前でそんなあからさまにため息つくねん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はあ」
「いやだから、気になるからやめてくれへん?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は「今の話し、きいとったよな?」

忍足に散々突っ込まれても、アタシはため息をやめようとしない。だってね、今悩んでるのはね、
これを忍足に相談するか相談しないかを悩んでるの。内容はアレよ、アレ。今日の話。ちゃんとメ
ールは送った。勿論0時に。でもね、でもプレゼントが決まらないの。

「ねえ忍足」
「なんや」
「・・・・・・・・・・・やっぱなんでもない」
「なんやねん!言えや!気になるやろ!」

襟元をつかまれ、ガンガン振られる。頭がガクンガクンなるだろ、それが女に対しての態度か!ま
あ忍足はアタシを女とみなしてないんだから気にも留めないだろう。相変わらず失礼なヤツだ。存
在自体が失礼なヤツだとは前々から思っていたけどね。

「仕方ないなぁ〜」
「なんやねん、自分何がしたいねん」
「ねえ、今日なんの日だかしってる?」
「宍戸の誕生日やろ」
「・・・うん、そう、そうなのよね」
「なんやねん自分、忘れてたん?」
「んなワケねぇだろ、忍足の誕生日は忘れても亮の誕生日ぐらい覚えてるわボケ」
「あ、そう」
「・・・あれ?っていうか忍足の誕生日っていつだっけ?」
「なんでそこで俺の誕生日やねん!んでもって忘れとんのかい!」
「いやだって覚えにくい誕生日じゃん」
「全然覚えにくないわ!10月15日や!あ、プレゼントはなんでもええで」
「ごめん、あげるつもりないから」
「なんやねん!」
「いやだって忍足にあげる義理ないし」
「跡部にはやるのに?」
「跡部に媚売っとけばアタシの誕生日にいいものもらえるの」
「・・・自分情けないで」
「ちょっとうるさい。で、どっから忍足の誕生日の話しになったんだっけ」
「知らんわ!で、宍戸の誕生日で、それがどうしたん?」
「ああ、うん。プレゼントが決まらないの」
「プレゼントぉ〜?」

忍足は怪訝な顔をして、アタシを見る。なんだその眼は、なんだその眼は!ムカつくな、お前。前
からだけど。

「そんなもん決まっとるやん」
「なにさ」
「ネコミミメイド服きて家に先回りして、「おかえりなさいませご主人様だニャンッ♥」ってい
 うんや」
「死ねばいいと思うんだけどお前」
「んで最終的に「プレゼントは、アタシにゃん♥」っていえば宍戸もイチコロや!」
「殴っていい?ねえ、コレ殴るべきだと思うんだ」

んなもんできるわけがない。家に入り込むのは、そりゃ、簡単だけど。アタシと亮は幼馴染である。
だからできるのである。でもそういう問題じゃあない気がする。それにネコミミメイド服なんて持
ってないに決まってるだろ、コイツアホか。

「あ、服なら俺ん家あるで」
「・・・なんであんの」
「変な事は気にせんでええよ」
「まあアンタの性癖なんか興味ないからね」
「これ性癖の問題とちゃうと思うんやけど」
「まあいいや、でもそれアタシやんないけど」
「じゃあ今から買いにいくん?」
「・・・」
「何買うか決まってるん?」
「・・・・」
「はよせんと、宍戸もスネるで」
「・・・・・・」
「さぁ、どうする!」
「わぁーったよ!着ればいいんでしょ、着れば!」
「そやそや、それでええんや」

得意げの忍足に、アタシはコイツを殺したくなった。じゃあ忍足はニヤ、と笑って、

「じゃあいこか」
「は?何所に?」
「いや、やから俺の家」
「まだ学校終わってないじゃん」
「アホ、学校終わってからやと間に合わんやろ?」
「あ、そっか」
「ホラ、いくで」
「うーい・・・」




でもなんか凄い波乱っていうか、嫌な予感するのってアタシだけ?いや、違うはず。









「似合うやん!」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッコレ絶対羞恥プレイだって」
「それでニャン、とかご主人様っていってみ?っちゅーかお決まりのセリフいってみ?」
「お決まりのセリフ?」
「「おかえりなさいませご主人様」ニャンつけて」
「なんでアンタの前でやんなきゃいけないの」
「練習や練習、さん、はいっ!」
「・・・・・・・・・・・・・お、おかえりなさまいせご主人様、にゃん・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・ッ」

忍足がいきなり鼻押さえて横を向いた。何だお前、そんなキモかったのか。やれっていったのはお
前だというのに。ちなみにココは亮の部屋。亮の部屋には、アタシの部屋の窓からいつも入るので
ある。アタシの部屋と亮の部屋は向かい合わせで、二階にあるけどさほど危険じゃない。アタシと
忍足はそっから入ったワケである。不法侵入とか、いつもしてるから気にはしないのである。

「自分、俺、惚れそうやわ」
「は?」
「いや、なんでもあらへん。やっぱり反則や」
「・・・・いや意味がわからない」
「・・・襲ってもええ?」
「は?・・・ちょっ─────」
「ただいま、おい、くるなら連絡ぐらい・・・」




あ、









玄関を見ると靴はナシ。でも部屋で物音がしてるから、多分かなんかが来てるんだろう。まあ、
今日は俺の誕生日だから。まあ、な。にしても今日アイツ、6限サボりやがったな。しかも忍足と一緒
に。彼氏としてはこっちは面白くないワケで。かなりムカついてるワケで。とりあえず、部屋にいっ
てみることにした。

「ただいま、おい、くるなら連絡ぐらい・・・」

ドアを開けて眼に入ってきた図、それは、忍足がに覆いかぶさってる状況だった。しかも、
の格好は、猫の耳?をつけた、今流行のメイド服をつけてるって格好だ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「いや、亮、これね、違うのっ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何が違うんだよ」
「いやね、あのね、人の話し、きいて、くれるかな?」
「ぁ゛?」
「いや、ね、うん、ごめ、ん。亮・・・」

の声は段々小さくなっていく。それはそうだ。俺の額には青筋がそりゃぁもうでてるだろう。忍
足の顔もサーッと青くなっている。

「ホンマや!ホンマに話しきいてや宍戸!」
「亮!お願い!ね!っていうか離れろクソ忍足!」
「うわ!蹴るなや!ソコは男の大事な場所────」
「とりあえずテメェ等そこに正座しろ」
「「・・・・ハイ」」









正座しろといわれておとなしく正座したアタシと忍足。今日は亮の誕生日なのに何故こんなことしな
ければならないのか。全ては忍足のせいだと言える。亮は本気でキレていた。そりゃぁ当然だろう。
そう思う。

「・・・・・・・こうなった経緯を話せ」

亮の手には何故か竹刀が握られていて、それを床にドンドンと叩いている。よかったね、今おばさん
がいなくて、いたら怒られてたよ。でも、今の亮はハッキリいって、普段の跡部よりも恐い。

「あんな、今日5限と6限の休み時間にから相談うけたん」
「相談だぁ?」
「宍戸へのプレゼントが決まらん、て」

そう忍足が話すと、少し顔を緩ませたけど、またすぐに引き締まった。それで?という睨みの顔に、
アタシも忍足もビビる。

「それでな、俺がこういうのはどうかっちゅーんで・・その、この服を貸したワケや」

忍足がアタシの服を指差すと、亮はその服をジロジロと眺める。やめてください、唯でさえこれ、羞
恥プレイの塊なんだから。本気で恥ずかしいんだから。

「・・・・で?」
「それで、その、6限サボって俺ん家にこれとりに来て、宍戸ん家で着替えたわけや。あ、勿論着替え
 中は見てないで」
「当たり前だボケ」

ダンッ、と竹刀で床を叩く。その姿にアタシも忍足も本気でビビる。本気で亮が恐い。マジで恐い。
まあ確かにあの姿見られたら終わりである。っていうかなんでアイツはアタシの上にのっかってきた
んだ。マジ死ねばいい。

「で、その、な?予行練習で、おかえりなさいませ〜とか言わせたんや。それが思った以上に、な、
 その、どきゅーんときて」
「・・・・・・・・・・・それで、襲おうとしたわけだな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・スンマセン」

何忍足、アンタ襲おうとしてたの?
やって自分かわいすぎやろ。
え、マジで死ねよ。
・・スンマセン。

「で、忍足」
「・・・ハイ」
「出てけ」
「・・・・・・・・・・・・・・あ、でも靴ん家・・」
「俺の靴かしてやるからでてけ。後でもってってやるから出てけ」
「・・・・・・・・・ハイ」

忍足はヘコみながら出て行った。うん、ご愁傷様!っていうかその前にアタシに身の危険が迫ってる!

「・・・・・・・・・・・・・・・・で、
「ハイ」
「お前なあ」
「スイマセンでした、すごく反省してます」

アタシは深く頭を下げた。









「スイマセンでした、すごく反省してます」

深く頭を下げた。でも、忍足の気持もよくわかると思った。確かに、これはかわいい。確かにこ
れはヤバイ。襲いたくなる。ムラムラする。

「・・・
「ハイ」
「・・・・・・・・・・・・お決まりのセリフ言ってみろ」
「お、お決まりのセリフ?」
「あの、その、おかえりなさまいせなんとかってやつ・・・」

俺今絶対顔真っ赤だ。激ダサ。は、わかったようで、顔を赤らめて、

「お、おかえりなさいませご主人様・・にゃん?」

ソレを聞いた途端俺は鼻を押さえ勢いよく横を向いた。確かにこれはかわいい。襲いたい。今すぐ襲
いたい。忍足の気持がよくわかる。しかも“にゃん”というオプションつきである。まったく、コイ
ツは俺を殺したいのか。そうなのか。そうなんだな?は凄く恥ずかしそうにこっちをみている。

「亮・・・?どうしたの・・・?」
「いや、なんでもねぇ」
「・・あ、あのさ、お、忍足が言えってゆったん、だけど、さ」
「・・・なんだよ?」

は顔を赤らめて、そっぽを向いた。なんだよ、気になるだろ、早く言えよ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・ぷ、プレゼントは、あ、あたしですにゃん・・」

イチコロである。これはもうなんというか、襲わない方がどうかしてる。ムラムラしないほうがどう
かしている。俺は本気でそう思った。でもあれだ、本人がこういっているのだから、




「その言葉、忘れんなよ?」
「・・・え?」




ってことでおいしく戴きました。









プレゼントはタシ♥











宍戸さんハピバ!愛してるよ!