「宍戸宍戸!今日一緒にかえろ!」
「・・・は?」
「いや、一緒にかえろ?」

ちっこくて、見た目はかわいらしく、中身はとてつもなく突っ込み気質そして俺の幼馴染の
コイツは、俺の後輩、長太郎の彼女である。それなのになんでコイツは俺と帰ろうとホザく
のか。やめてくれ、俺が長太郎に殺されるだろ。

「今日長太郎用事あるから一緒に帰れないらしいんだよね」
「へ、へえ」
「だからさ、どうせ家隣同士なわけだし、一緒に帰らない?」
「・・・お、おう」

恐い、かなり恐い。何が恐いって長太郎が恐い。いや、ここにいないからいいんだけどな、
今は。今はな。俺とコイツが幼馴染ってだけでもイライラしてるっていうのに、こんな状況
を見たら俺はアイツに殺されるんじゃないか。恐いよな、アイツ本当に。

「用事ってなんなんだろうな・・・」
「わかんない、なんかクラスの子の呼び出しだって」
「・・・は?」
「なんか呼び出しらしいよ、うん」
「お前、いいのか?行かせて」
「え、うん。別に」

いやいや、お前彼女だろ?いいのかよ、それ、絶対告白だろ?でもコイツはそんなこと気に
した様子も無く、

「別にいいんじゃない?だってあたしそんな気にしないし」
「いやいや、気にしろよ」
「なんで?」
「お前彼女だろ?」
「うん、まあそうだけどさ」

ニコニコ笑うコイツ、本当はボケ属性か?いやでも長太郎に対しては突っ込みだしな。うー
ん、と俺が悩んでいる間に、コイツは俺の腕を引っ張る。

「早くかえろーよ!あたしおなかすいたー!」
「お前はダダをこねるガキか!」
「いいよそれでも、おなかすいた。あ、宍戸!ラーメン奢って!」
「は?んな金ねえよ!」
「じゃあマックでもいいよ」
「だからんな金ねえって!」
「ケチ!こんな貧乏女子中学生におごらせる気!?」
「むしろテメェはまっすぐ家に帰りやがれ」

おかしい。長太郎の時はもうちょっとオトナっぽかったはず(のような気がする)いや、俺
の気のせいか。そういえば昔からコイツはこうだった気がする。まあいいか、うん、たまに
はこういう展開も。最近長太郎がコイツになついてばっかで全然昔のように遊んだりしなか
ったしな。

「仕方ねえな、いってやるよ」
「わーい!流石宍戸!」
「よし、じゃあいく・・・」

ポン、と肩に手がのっけられた。この感じはヤバイ。悪寒だ。寒気だ。俺は縮みそうになり
ながら、手が乗っけられた方をおそるおそる振り向いた。

楽しそうですね、宍戸さん?

魔王光臨─────────ッ!っていうかお前呼び出されたんじゃなかったのか、むしろ
呼び出されてそのままどっかいっちまえばよかったのに。

「まさか、俺がこの人残していくわけないでしょう?宍戸さんとうとう頭までバカになりま
 したぁ?(笑)」

(笑)ってつけてるところがまたムカつく!むしろなんでコイツが絡むとそう態度が急変す
るんだ、オマエは!

「大丈夫ですか?何かされませんでしたか?汚されませんでしたか?」
「あ、うん、大丈夫だけど・・長太郎、呼び出しは?」
ああ、あんなの一発木に拳めりこませたら怯えて帰っていきましたよ♥
「え、いいの?そんなことして」
「あなたを待たせてるわけにはいかないですよ!こんな野蛮人がついてるのに!」
「宍戸は野蛮人なんかじゃない「野蛮人です、あなたに近寄るやつはみんな野蛮人です!」

なんだそりゃ。じゃあさっきコイツに触れた跡部やジローも野蛮人なのか。さっき忍足も触
れてたぞ。まああれは正真正銘の野蛮人だけどな。

その人たちは後で抹殺しとくので安心してください宍戸さん♥
「安心できねーっつの・・」
「なにかいいました?」
「いや、なんでも」

長太郎は黒い。長太郎は恐い。俺が一番部内で恐れているのは長太郎だ。そしてコイツは呆
れ顔だ。もうこんな長太郎をずっと見てきているからだろう。

「じゃあ、帰りましょうか」
「え?あたし宍戸とマック行く約束してるんだけど・・」
なんかいいました?帰りましょう?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・帰ろうか」
「はい♥」

有無を言わさない態度を察知したのだろう。流石彼女。ごめんね宍戸、という目でみられた
が、全然大丈夫だ、むしろつれて帰れ。でも手を引っ張られているところを見ると哀れで仕
方がない。がんばれ、俺の幼馴染よ。

「あ、そうだ」
「え?」

長太郎は何かに気づいたようにいきなり立ち止まった。俺もアイツも、ハテナマークを頭の
上にのっけてる。すると、長太郎はアイツの腕をまた強引に引っ張って、キスをした。

「んっ!?」

周りにはたくさんの人がいて(跡部や忍足やジローもいた)見物状態である。それが30秒以
上も続けば、なおさらのこと。俺はポカーンとした顔でみていて、しばらくその状況から目
が離せなかった。やっと長太郎はアイツを離したと思ったら、

この人に手出さないで下さいね?俺が許しませんよ?

と、絶対零度の黒笑顔を見せた。もう俺は何も言う言葉がなかった。とりあえず、アイツに
はご愁傷様?とりあえず長太郎は跡部達に見せ付けたかったのだろう。むしろ毎日のように
見せ付けられているのに、まだやる気か。

「さ、帰りましょうか?今日は俺の家にきてくださいね?」
「え、でもあたし家帰って早くご飯「きてくださいね?
「・・・・ハイ」






俺も可哀想だけど、俺の幼馴染のがもっと可哀想だと思ったある夏の日。











哀れなのは









(なんで俺の部活ってこう、個性的な集まりなんだろう)