「じゃあまた明日ねー」
「うん、また明日ー」




俺は田仁志。今日も彼女をストーk・・・いや、熱い視線を送りつつ追いかけている。
誰だ今ストーカーとかいったヤツ、殴るぞ。沖縄から東京まで来て何してんだって思う
と思うけど、正直俺も思うし。でも俺は街中でとてもカワイイ子を見つけてしまったん
だ。その子に夢中になってしまったんだ。そしてその子を調べてみたら氷帝の生徒だと
いうことがわかった。しかもあの跡部とかいうヤツ率いるテニス部の宍戸の彼女だとい
うのだ。驚きだ。

「ねーあの人キモくない?」
「しかもどんだけたい焼きもってるんだってカンジ〜」

どんなに後ろ指をさされようとかまわない。俺は俺の道を行く。たい焼きを食いながら、
俺は彼女が変なヤツにつきまとわれないか見張るのだ。誰だストーカーとかいったヤツ、
ビックバン食らわすぞ!わざわざ全国大会が終わっても沖縄に帰らず、彼女を見守る為
だけに東京に残ったのだ。わざわざ標準語を勉強してまで、だ。だから今とても標準語
を使うのに気をつけている。俺はちゃんと使えてるだろうか。今も使っているのだけど。
とりあえず、宍戸を呪おうとは思ったけど。

「・・・・ふふーん、あ、亮ちゃんからメールだ」

彼女が携帯を取り出し始めた。彼氏からメールらしい。俺も彼女のアドレスが知りたい。
知りたい知りたい。どうするべきか。コレはやっぱりお近づきの印に焼肉に誘うしか
・・・いや、そんなことしたらひかれるかもしれない。じゃあまずどうするべきか。

「ねーちょっとそこのオネーサン、俺等と遊ばない?」
「はい?」
「いいじゃーん、カワイイね、中学生?」
「いや、あの・・・」

な、なんと彼女がナンパされている!確かに彼女はカワイイしナンパしたくなるのはよ
くわかる、なにせ俺が惚れた相手だからな!だけどどうするべきか。彼女は困ってる。
相手は二人。迷っている暇はない。腕を掴まれていて、彼女は今にも連れてかれそうだ。
こういうときこそ、“アレ”が役に立つ時だと思った。俺はサッと、壁からでて、勢い
よく叫ぶ。

「ブゥゥゥゥゥゥゥゥン!」
「な、なんだお前!」
「彼女に手だすがーや!」
「んだとこのデブ!」
「ブゥゥゥゥゥゥゥン!」
「な、なんだコイツキモい!」
「おい、い、行こうぜ!」

男達は逃げていった。どうだ、俺の力を見たか。流石俺。そんな大満足な俺に、あの、
と遠慮がちに声を掛けてきた彼女。彼女のことをスッカリサッパリ忘れていた!彼女を
助けるためだったというのに。

「あの、ありがとうございます」
「き、きにすんじゃねー」

彼女は深々と俺に頭を下げている。なんて礼儀正しいんだ。俺はますます惚れてしまう
かもしれない。というか、なんというか顔がとても熱い気がする。なんだこれは、なん
だこのドキドキは!彼女を見るたびに胸が高鳴る。さっきもそうだったが、今はもっと
だ。なんだ、俺は死ぬのか。心臓病か。

「あの、」
「な、なんだ」
「最近よく、みに来てますよね?」
「・・・え、あ、」

気づいていたのか、でも中々言葉がつむげない。俺はどうしてしまったんだ。俺は何が
したいんだ。彼女を目の前にすると何をしていいかわからず、ぐあーとなる。

「えっと、氷帝のテニス部に興味があるんですか?」
「・・・え?」
「最近氷帝のテニス部の前でみるので・・」

いや、それは彼女を見たかったからであって氷帝にはサラサラ興味もない。俺の学校な
ら簡単に勝てるしな!でもそんなことは口が裂けてもいえないのである。

「いや、あの、」
「あ、もしかしてウチの学校になにか用事とか・・・?」
「いや、えと」
「・・・あ、あたしが聞くことじゃないですよね、ごめんなさい」

またまたペコリと頭をさげる。なんてかわいいんだ。こんなのがいたら危ないだろう。
俺、今ムラムラしてる。でもなにも出来ない俺がいる、なんて悔しいんだ。

「あ、でもとにかくありがとうございました・・・!」
「・・・全然、大丈夫、です」

いつもどおり俺は喋れてない。こんなものなのか。恋ってこんなもんなのか・・・!?

「あ、あの」
「おい、どうした?」
「あ、亮ちゃん」

俺が喋りかけようとしたそのとき、丁度後ろから来た宍戸(とかいうヤツ)が近寄って
きた。知ってる、コイツは彼女の彼氏だ。俺の天敵である。ソイツは俺と彼女を交互に
見て、

「・・・コイツに何かされたのか?」
「ううん、この人、アタシをナンパから護ってくれたのよ」
「あ、そうなのか・・・ってお前田仁志!?比嘉中の!?」
「亮ちゃんしってるの?」
「いや、沖縄の比嘉中の田仁志ってヤツ・・だった気がする。すげぇ印象残ってんだ、
 この前の焼肉大会のときに」

そういややった気もする。いや、やった。ああ、コイツあの時いたのか。影薄すぎてわ
からなかった。宍戸は俺をじーっと見つめて、

「まあ、とにかく、コイツを助けてくれてサンキュ」
「・・・いや」
「おし、帰るぞ」
「うん、じゃあ本当にありがとうございました、田仁志さん」
「サンキュな」

二人は手を繋いで帰っていく。ああ、そうか、俺は置いてけぼりなんだな、当たり前だ
けど。でも彼女は幸せそうだった。だから俺もちょっと嬉しくなった。今日は帰ろう。
そしてゴーヤと焼肉を食おう。




あ、アドレス聞き忘れた。









のビックバン








(でもまだ見守る為に沖縄にはかえらない)