面白いと直感で感じた男の子を追いかけた好奇心旺盛な私と、


白いウサギを追いかけた好奇心旺盛なアリスは、


多分、同じキモチ。




「・・・・おい」
「は、はいっ!」
「・・・・なんでついてくんの」
「いえ、別に理由はありませんが」

理由はないのに何故追いかけてくるのか。そんなカオを彼はしている。なんとなく興味があったから、
っていうのが多分一番しっくりするんだもん。

少し前、急に友達にドタキャンされた私は待ち合わせの噴水前で呆然としていた。そんときにナンパ野
郎が近づいてきて、振り払えなくて困っているときにこの少年が助けてくれたのだ。うん、なんていう
か、その瞬間、格好いいなぁと思ってしまった。それで、なんていうか、そう、成り行きって言うか、
どうせ暇だし。

そんな理由で、ついてきてしまった。

「・・・お前、さ」
「なにー?」
「どっかで会った事ねえ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・ほ?」

どっかであったことないかと問われましてもなんとお答えしたらいいのか。あーでもなんとなく見たこ
とあるかも、いや、かもっていうか、絶対ある。今気づいた。なんだろう。なんか本当に見たことある
気がするんだよ。っていうか今気づいたってのも変な話だけど。いわれて気づくコトってあるじゃん?

「・・・・・・・あーなんていうかさ、学校で」
「・・学校?えーっと・・アナタ何処の学校ですか?」
「氷帝」
「え、うそ!マジ?一緒だー!」

なんと一緒の学校だったのか!どーりで見たことあるはずだ。でもあんな広いマンモス校のなかなら見
たことあるような気がする、っていうのも仕方ないよね。ほら、あそこ幼稚舎から大学まであるじゃん?
あ、でも見るからにこの人中学生だよね。うん、絶対そう。私も中学生だけど、中学生に見えない人た
ちって結構いるのよね。例えばテニス部の跡部クンとか忍足クンとか。絶対関わりたくない。だってあ
の男子テニス部なんてホラ、なんていうか、ホスト部ってカンジじゃん?いっつもキャーキャー女子に
騒がれてて。あーいうの、苦手なんだよね。まあ跡部クンとも忍足クンとも同じクラスになったことな
いし喋ったこともないし、当たり前だけど。でも、あれ?この人って本当にどっかで見たことある気が
する。いや、あるのは当たり前なんだけど、なんかなーなんかなー。

「お前、中学生、だよな?」
「小学生に見えますか」
「いや、まあ、見ようによっては見える」

うわ、酷いこといったよ!私結構幼く見えること気にしてるんだよ!それをさ、ハッキリとさ、まあ別
にいいけどね。

「キミは何年生よ?私より年下?」
「俺は中3だぜ。お前は?」
「うわー、偶然!私も中3!すごいね!」

そしたらその人はちょっと噴出して、みえね、と呟いた。ひっどいなあ。気にしてるんだってば!まあ
確かに?よく中1ですかーとは聞かれるけど?ハッキリいうことないじゃん?ねえ?

「あー・・じゃあやっぱりどっかで会った事あっかもな、さっき気づいたけど」
「うんうん私もさっき気づいた!すごいね!」
「クラスどこだよ?」
「C組だよ!3年C組!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・は?マジで?」

その人は本気でビックリしたような顔をした。え、何その顔。私おかしなことでもいいましたか。

「・・・・・・・・・・・・・俺もC組なんだけど」
「・・・・・・・え!?うっそだー!だって見たこと・・ない・・ようなあるような」

えー!えー!
でも私あまり人と喋らないって言うか男子と顔あわせないって言うか男子と喋らないっていうか。あま
り男子の子と知らないから名前と顔一致しないし未だに顔覚えられないし。まあクラス替えしてまだ一
ヶ月もたってないから、仕方ないかも、なんだけど。え、もしかしてそれで?だから私この人の事一目
で気づかなかったの?

「・・・・・・・・・・・・あーとにかく、同じクラス、だったな」
「・・あーうん、そう、だね」

なんとなくギクシャクしてしまう。やっぱりさっきまで同じクラスなのに気づいてなかったから?そう
いえば私ここまで男子と喋ったのも初めてだ!っていうか私なんで男子についてくるとかすごいことし
ちゃってるの!うわーなんか恥ずかしい。面白いって直感で感じてついてくるなんて、うわ、私って大胆。

「お前、名前は?」
「桜井藍乃。あなたは?」
「宍戸亮」
「宍戸・・宍戸・・どっかできいたことあるなー・・あ、当たり前か」
「まあ、同じクラスだし。お前の名前もなんか聞いたことあるぜ。自己紹介とかで」
「あー・・私あれボーッとしてた。なんかねー人のってあまり聞くのスキじゃないんだよねー」
「あー俺も、なんか退屈だよな」
「うんうん!」

思わず息統合してしまった私たちはお互い顔を見合わせて笑ってしまう。なんか新鮮でいいなあ、こう
いうの。なんか嬉しくて楽しくて。このまま時間がとまってしまえばいいな、なんて。でもそれでも歩
いてる。何処へ向かっているのかはわからない。って私はただ宍戸君についてきただけだし。うん。宍
戸君も歩くから私も歩く。そんなカンジ?どこにいくかわからないし、まあ別にしらなくても支障ない
気がするけど。

「つか、お前本当なんで俺についてくんの?」
「だから理由はないって。あるとしたら・・うーん・・興味あるから?」
「は?」
「あのねー私ドタキャンされて悲しくてあそこでブラブラしてたら声かけられてーみたいな?だから暇
 だったし興味あったから助けてくれた宍戸君の後にくっついてみたの」
「・・もし俺が変な人だったらどーするつもりだったんだよ」
「変な人じゃないと思ったからついてきたんだよ。私人を見る目ぐらいはあるもん」
「それならあんときちゃんと断れよ。アタフタしすぎてお前あのままだと強引に拉致られてたぞ」
「人を見る目と断るのは違うと思う!」

私がはい、挙手していうと、宍戸君は、深い深いため息をついた。なにさ、私がおかしな子とでもいい
たいわけ?否定はしないけど。確かに私はおかしな子ですよ。ふんだ。

「お前さー」
「何さ、おかしな子だとでもいいたいワケ?」
「お、わかってんじゃねえか」
「しっつれいな人ね」
「まあ俺が思ってたのはおかしいっていうよりガキっぽいってことだけどな」

それは確実に褒めてない。逆におかしな子といわれたほうが私的にはまだマシ、のような気がする。確
かに私は背も低いし子供顔だし子供っぽいってよく言われる、性格も。でも普通女子に向かってそんな
こといわないよね!宍戸君絶対女子にモテないよ。まあ、顔は格好いいけどね!っていうか、そういえば。

「宍戸君、運動系っぽい顔してよね?なんか部活はいってるの?」
「・・・・あー俺のことすら知らなかったから当たり前か、テニス部」
「へーえ!跡部君や忍足君と同じなんだ?確か200人部員いるんだよね!すごいよねー!でもレギュラー
 は8人なんでしょ?」
「・・・お前詳しいな、俺のことは知らないくせに」
「だって友達に跡部君や忍足君好きの友達がいるんだもん。っていうかなにーさっきから!俺のことは
 しらないーとか!私情報に疎いみたいじゃん!」

そうやって文句いったら笑われた。その通りだろ、って。失礼しちゃうな、まったく。でも当たり前か、
ともいった。

「ねえねえ、跡部君たちと仲いいの?」
「・・・・・・・・・・・まあ仲いいっていやあな」
「えーすごいね!」
「なんだよ、跡部狙いか?」
「違うよ!さっきもゆった!友達が跡部君好きなだけなのー!」
「あーハイハイ。っていうか俺レギュラーだし」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ほ?」

私がきょとん、と顔をして少しかんがえこむ。うん?レギュラーっていった?レギュラーってことは200
人中8人しかなれない人で一番強い人たちのことで。つまり跡部君や忍足君とは同じ立場なワケで。(あ、
でも跡部君は部長だから違うかな)うん?ってことはこの人まさか、かなりの凄い人だったりする?え、
もしかして私そんなこともしらないで随分失礼なことをいっちゃってたりする?

「・・・・・・えと、ごめんなさい」
「は?なんで謝るんだよ」
「えーっと、だってサ、ホラ、私何気すごい失礼な事いったでしょ?」
「失礼?」
「・・・跡部君と仲いい?とか、レギュラー8人って凄く有名なのに私宍戸君の事知らなかったし、宍戸
 君の存在すら気づかなかったし」
「あー・・・でも、俺だってお前のこと気づいてなかったし、お互い様だろ?」
「だって宍戸君有名人じゃん。私凄い疎いじゃん」
「別に有名とか関係ねーだろ。それに跡部や忍足のが有名だし、知らないのも無理はないだろ?つかお
 前、跡部や忍足以外のメンバーしってっか?」
「・・・・・・・・・うーん、宍戸君ぐらい?」
「だろ?だから知らなくても全然いいんだって、気にすんなよ」

そうやって、宍戸君は笑った。
それはさっきまでの面白いから笑った、じゃなくて、優しくて、凄く安心する笑い方。なんか、すごい、
格好いい。ううん、格好いいだけじゃなくて、なんだろう。凄く優しい。すごい、ドキドキするのはな
んでだろう。もはやこれはよく友達がいっている恋の病などではないだろうか。いやいやまさか、だっ
てこんな早い、まって会って何時間も立っていないのに、そんな、バカな。

「・・・・・・・・・・・どうかしたのか?顔赤いぜ?」
「な、なんでもないよ!」
「で、お前これから用事あんのかよ?」
「へ?ううん、ないよ。ドタキャンされたし。だから宍戸君についてきたの。宍戸君はどこへいくの?
 ・・あ、もしかして彼女のところ?」

自分でいってて、嫌な気持になる自分がいる。バカだなあ、なんで聞いたんだろう。胸がチクチクする。
考えてみれば宍戸君は格好いい。彼女がいてもおかしくは、ない。あーなんか嫌な気分になってきた。
私のバカ、バカ!宍戸君は一瞬キョトンとして、苦笑する。

「俺は彼女なんかいねぇよ。跡部や忍足みたくモテねぇし」

へ?と今度は私がキョトン、とした顔になったに違いない。すると、その顔がおかしかったのか、宍戸
君はアハハ、と声をあげて笑った。変な顔、という言葉つきで。

「へ、へんな顔ってひどくない!?」
「ワリィワリィ」
「じゃあ、彼女のところじゃなかったらどこにいくの?」
「テニスコート。お前もくるか?」
「えっえっ・・私テニスできない!」
「できなくてもいいって、後輩待たせてるし。どうせ暇なら見にくるか?ってことだよ」
「い、いきます!」
「おー」

また宍戸君は笑った。その笑顔は反則だ。なんでだよコノヤロウ、格好いいと思ってしまう自分がいる。
どうしよう、どうしよう、こんなドキドキ感、初めてだ。あーもう、これがよく皆がいう「恋」ってやつ
なのか!




好奇心で追いかけていったアリスは、


「恋」という大きな感情に、


落ちてしまった。



に落ちたアリス




(テニスする姿も格好いいんだから!ドキドキさせすぎなの!)



++++++++++++++++++++++++++
随分と遅くなってしまってすいませんでした。楽しく書かせていただきました。
かなり悩んだのですが、結局出会いとして、っていうか気づかないなんてかなり鈍感なヒロインさん・・笑
私なら宍戸さんを見つけてソッコー顔を赤くします。
ありがとうございました!

黒姫夏優